サーバはどこで動いている? データセンターの今と、利用者の備え

レンタルサーバを使っていると、自分のサイトが実際にどこで動いているのかを意識することはあまりない。サーバの多くは「データセンター」と呼ばれる専用の施設に置かれ、停電や地震、火災に備えた設備で守られている。ただ、データセンターの姿はこの15年ほどで大きく変わり、どれほど頑丈な施設でも止まったり燃えたりすることが、現実の出来事として知られるようになった。今回は、データセンターの今と、利用者として備えておきたいことを紹介していこう。
データセンターはサーバを置くための専用施設
データセンターは、大量のサーバやネットワーク機器を設置し、安定して動かし続けるための専用の施設だ。インターネットにつなぐサーバを置く施設は、かつて「インターネットデータセンター(iDC)」とも呼ばれていた。大容量の通信回線と、止まらない電源、サーバの熱を冷やす空調などを備えている。
レンタルサーバの会社には、自社でデータセンターを持っているところもあれば、通信会社やデータセンター専門の会社が運営する施設のスペースを借りて、自社のサーバを置いているところもある。
15年でデータセンターの位置づけはこう変わった
2010年ごろのデータセンターは、レンタルサーバの会社や企業がスペースを借り、自分たちのサーバを並べて運用する場所というイメージが強かった。施設の多くは首都圏と関西に集中し、災害への備えも施設ごとにまちまちだった。
現在は、AWSやMicrosoft Azure、Google Cloudといったクラウド事業者が、世界中に巨大なデータセンターを構えている。1台のサーバを物理的に借りるのではなく、仮想化された環境を必要な分だけ使い、東京と大阪のように複数の地域(リージョン)に分けて動かすのが当たり前になった。
さらに、AIの普及で大量の計算を行う施設の需要が急増し、電力の確保やサーバの冷却が大きな課題になっている。空気ではなく液体でサーバを冷やす方式も広がり始めた。災害への備えや電力の確保のため、北海道や九州など、首都圏・関西以外の地域にデータセンターを建てる動きも進んでいる。
データセンターの位置づけの変化
各社がスペースを借りてサーバを並べる場所から、クラウド事業者の巨大な施設が中心の時代へ。運用は仮想化と複数地域が当たり前になり、AI需要による電力と冷却、地方への分散が新しいテーマになった
データセンターの災害・障害への備え
データセンターは、24時間365日止まらないことを前提に設計されている。主な備えは次のとおりだ。
電源では、停電が起きた瞬間に電気を送り続ける無停電電源装置(UPS)と、その間に起動する非常用発電機を備える。発電機の燃料は施設内に備蓄され、燃料会社と優先的に供給を受ける契約を結んでいる施設も多い。電力会社から2つの系統で電気を受けることで、片方が止まっても動き続けられるようにしているところもある。
地震への備えとしては、建てる前に地盤を詳しく調べたうえで、揺れを建物に伝えにくい免震構造や、揺れに耐える耐震構造を採用している。火災に対しては、煙や熱をごく初期の段階で検知する仕組みと、水を使わずにガスで火を消す消火設備を備えるのが一般的だ。
このほか、サーバの熱を冷やす空調、複数の通信会社の回線の引き込み、生体認証やカードを使った入退室の管理、監視カメラなど、何重もの対策が取られている。防犯上の理由から、正確な所在地を公表していない施設も多い。
データセンターの主な備え
電源・地震・火災・空調・回線・防犯の各方面に、何重もの対策が取られている。どの設備をどこまで備えるかは施設によって異なり、ティアなどの格付けが比べる手がかりになる
信頼性を比べる物差しができた
かつては、データセンターの災害対策に統一された基準はなく、施設ごとに説明を読み比べるしかなかった。現在は、信頼性の高さを段階で表す「ティア」という考え方が広く使われている。米国のUptime Instituteによる格付けがよく知られ、日本でも日本データセンター協会(JDCC)が、地震の多い国内の事情も踏まえた基準を定めている。
ティアは、設備を止めずに点検できるか、一部の機器が壊れてもサービスを続けられるか、といった観点で段階が決まり、数字が大きいほど止まりにくい。このほか、情報セキュリティの管理体制を示すISO/IEC 27001などの認証を取得しているかどうかも、施設やサービスの信頼性を判断する手がかりになる。
それでもデータセンターは止まる・燃える
これほどの備えがあっても、データセンターの事故はなくならない。2021年3月には、フランスの大手事業者OVHcloudのストラスブールのデータセンターで火災が起き、建物の1つが焼失した。同じ施設の中にしかバックアップを置いていなかった利用者は、データを取り戻せなかった。2022年10月には、韓国のデータセンターで電源設備のリチウムイオン電池から火災が起き、カカオトークなどの身近なサービスが長時間使えなくなった。
大規模な停電や回線の障害、設定ミスによるシステム障害でも、データセンターのサービスは止まることがある。どれほど頑丈な施設でも、「施設ごと止まる」可能性はゼロにはならないのだ。
利用者として確認しておきたいこと
大切なのは、サーバと同じ場所にしかバックアップがない状態を避けることだ。レンタルサーバの自動バックアップは便利だが、その保存先が同じデータセンターの中であれば、施設ごと被害を受けたときに一緒に失われるおそれがある。
レンタルサーバを選ぶときや、今の契約を見直すときは、次の点を確認しておこう。
- 自動バックアップがあるか、何日分(何世代分)を保存しているか
- バックアップの保存先が、サーバとは別のデータセンター・地域になっているか
- バックアップから自分で復元できるか、復元に費用がかかるか
- データセンターが国内にあるか(法律やサポートの面で安心な場合が多い)
- 過去の障害の情報や、稼働率の目標を公開しているか
あわせて、サイトのデータやデータベースを定期的に自分でもダウンロードし、手元やクラウドストレージなど、サーバとは別の場所に保管しておくと安心だ。
バックアップは別の場所に置く
サーバと同じデータセンターにあるバックアップは、施設ごと止まったときに一緒に使えなくなる。別の地域のデータセンターや別のサービス、手元など、サーバとは別の場所にも保管しておきたい
データセンターの変化のまとめ
| 比べる点 | 2010年ごろ | 2026年 |
|---|---|---|
| 主な使われ方 | 各社がスペースを借りてサーバを置く | クラウド事業者の巨大な施設が中心 |
| 場所 | 首都圏・関西に集中 | 北海道・九州など地方への分散が進む |
| 運用の形 | 物理サーバ・ハウジング | 仮想化、複数の地域(リージョン)での運用 |
| 信頼性の目安 | 施設ごとの説明を読み比べる | ティア(Uptime Institute・JDCC)、各種認証 |
| 大きな課題 | 地震・停電への備え | AI需要による電力と冷却、電池の火災対策 |
| 利用者の備え | データセンターに任せる | 別の場所にバックアップを置く |
よくある質問
データセンターとは何ですか?
大量のサーバやネットワーク機器を設置し、安定して動かし続けるための専用の施設。大容量の通信回線、止まらない電源、サーバを冷やす空調、地震や火災への備え、厳しい入退室管理などを備えている。
レンタルサーバのサーバはどこにありますか?
多くはレンタルサーバ会社が持つ、または借りているデータセンターに置かれている。防犯上の理由で正確な所在地は公表されないことが多いが、東京圏・大阪圏など、おおよその地域を公開している会社は多い。
データセンターが災害にあったらデータは消えますか?
データセンターは何重もの対策をしているが、施設ごと止まる可能性はゼロではない。2021年のOVHcloudの火災では、同じ施設内にしかバックアップがなかった利用者がデータを失った。バックアップを別の場所に置いておくことが大切だ。
データセンターのティアとは何ですか?
データセンターの信頼性の高さを段階で表す格付け。設備を止めずに点検できるか、一部の機器が壊れても動き続けられるかなどで段階が決まり、数字が大きいほど止まりにくい。Uptime Instituteや日本データセンター協会の基準がある。
レンタルサーバの自動バックアップだけで十分ですか?
保存先がサーバと同じデータセンターなら、施設ごと被害を受けたときに一緒に失われるおそれがある。保存先が別の地域かを確認し、あわせて自分でも定期的にデータをダウンロードして、別の場所に保管しておくと安心だ。
ピックアップ用語解説:ハウジング/コロケーション
データセンターのスペースや電源、回線を借りて、自分で用意したサーバを置くサービス。サーバそのものも借りるレンタルサーバとの違いはここにある。機器を自由に選べる一方、機器の購入や保守は自分で行う必要がある。
ピックアップ用語解説:リージョン
クラウド事業者がデータセンターを置いている地域の単位。日本には東京と大阪のリージョンを置く事業者が多い。1つのリージョンの中も、電源や建物が独立した複数の区画に分かれており、システムを複数の区画やリージョンに分けて動かすことで、災害や障害に強くできる。





