サーバ乗り換えのチェックポイント 新サーバを準備・確認してからDNS切り替え

ホスティングサービスは年々進化しており、より新しいスペックや手ごろな料金のサーバへの乗り換えを検討しているユーザーも少なくないだろう。しかし、サーバの乗り換えでは、Webサイトやデータベース、メールを移すだけでなく、DNSを切り替えるタイミングやSSL証明書の扱いなど、気をつけるべき点が多い。今回は、2026年時点の環境を前提に、サーバ乗り換えで押さえておきたい手順とチェックポイントを紹介していこう。
サーバ移転は「先に新サーバを完成させる」のが基本
サーバ移転で最も避けたいのは、Webサイトが表示されない時間や、メールが届かない時間をつくってしまうことだ。そのためには、旧サーバを動かしたまま新サーバを契約し、Webサイト、データベース、メールアカウント、SSL証明書をすべて用意して、動作を確認してからDNSを切り替えるという順番を守ることが重要になる。
新サーバの準備が整う前にDNSを切り替えたり、切り替えた直後に旧サーバを解約したりすると、その間はWebサイトもメールも使えなくなる。旧サーバの契約は、DNSを切り替えて新サーバで問題なく動いていることを確認できるまで残しておきたい。
DNSの切り替えはTTLで決まる
DNS(ドメインネームシステム)は、ドメイン名をサーバのIPアドレスに変換する仕組みだ。サーバを乗り換えるとIPアドレスが変わるため、ドメインのDNS設定(AレコードやMXレコードなど)を新サーバのものに書き換える必要がある。
かつては「DNSの変更が世界中に反映されるまで2週間程度かかる」と説明されることが多かった。しかし実際には、DNSの情報は各地のDNSサーバに一定時間キャッシュされ、その時間はレコードごとに設定されたTTL(Time To Live)で決まる。TTLが1時間なら、変更前の情報が使われ続けるのは原則として最大1時間程度だ。
そこで、切り替えの前日までにTTLを300秒(5分)程度に短くしておくのが一般的な方法だ。元のTTL以上の時間がたってからDNSを書き換えれば、多くの環境で数分から数時間のうちに新サーバへ切り替わる。ただし、ドメインのネームサーバそのものを別の事業者に変更する場合は、上位のDNSに登録された情報の反映に1〜2日程度かかることがある。
また、端末やネットワークによってはキャッシュが残ることもあるため、DNSを切り替えたあとも数日程度は新旧のサーバを並行して稼働させておくと安心だ。
DNSの設定は、ドメインを登録している事業者(レジストラ)か、DNSの管理を任せている事業者の管理画面で、利用者自身が変更するのが一般的になっている。ドメインとサーバを別々の事業者で契約している場合は、どこでDNSを管理しているのかを事前に確認しておこう。
Webサイトとデータベースの移行
Webサイトのファイルは、暗号化されたSFTPで転送するのが基本だ。暗号化されないFTPは、パスワードが盗まれるおそれがあるため避けたい。最近は、ホスティング事業者が提供する移行ツールや、WordPressの移行プラグインを使えば、ファイルとデータベースをまとめて移せることも多い。
データベースを使うWordPressなどのCMSでは、データベースの移行も必要になる。小規模なデータベースであれば、多くのホスティングサービスで用意されている「phpMyAdmin」でエクスポートとインポートができる。データ量が多い場合は、事業者の移行ツールやコマンドラインのツールを使うほうが確実だ。文字コードは、絵文字なども扱えるutf8mb4にそろえておきたい。
あわせて、PHPとデータベース(MySQLやMariaDB)のバージョンも確認しておこう。現在はPHP 8系が主流で、古いバージョンのPHPに合わせて作られたテーマやプラグインは、新サーバで動かないことがある。新サーバでCMSやプラグインを最新版に更新してから動作を確かめるのが安全だ。
新サーバでの動作確認は、パソコンのhostsファイルを書き換えるか、事業者が用意する動作確認用URLを使えば、DNSを切り替える前に行える。会員登録や問い合わせフォームなどで日々データが更新されるサイトでは、DNSを切り替える直前に更新を止め、データベースの最終的な差分を新サーバへ移すと、取りこぼしを防げる。
メールの移行
メールの移行では、新サーバにメールアカウントを同じ名前で作成し、旧サーバに残っているメールも移す必要がある。現在は、メールをサーバ上に保存して複数の端末で同期するIMAPが主流のため、旧サーバのメールボックスの中身を新サーバに移さなければ、過去のメールが見られなくなる。事業者の移行ツールや、メールソフトで新旧2つのアカウントを設定してメールを移動する方法がある。
切り替えの前後は、DNSのキャッシュによって、旧サーバにメールが届くこともある。新旧両方のアカウントをメールソフトに設定しておき、数日間は旧サーバにも新しいメールが届いていないかを確認したい。このとき、受信サーバにIPアドレスを直接入力すると、SSL/TLSの証明書と名前が一致せずに接続エラーになることが多い。事業者が用意しているサーバのホスト名(初期ドメインなど)を指定すれば、新旧それぞれのサーバに確実に接続できる。
また、迷惑メールと判定されないために、送信ドメイン認証のSPF、DKIM、DMARCの設定も新サーバに合わせて見直しておこう。特にSPFには、新サーバの送信元を含めておく必要がある。
SSL証明書と切り替え後の確認
現在はほとんどのWebサイトがHTTPSで公開されており、新サーバでもSSL証明書が必要だ。多くの事業者が提供する無料SSLは、DNSが新サーバに向いてから自動で発行される仕組みのものが多く、切り替え直後の短い時間、ブラウザに警告が出ることがある。DNSを切り替える前に証明書を発行できる仕組みを用意している事業者もあるため、事前に確認しておきたい。
DNSを切り替えたら、Webサイトの表示、HTTPSでの接続、問い合わせフォームの送信、メールの送受信、定期実行(cron)の処理、バックアップの設定を確認する。問題がないことを確かめ、旧サーバにアクセスやメールが届かなくなったことを確認してから、旧サーバを解約しよう。
サーバ移転のチェックリスト
移転の作業と、それぞれのタイミングの目安をまとめておこう。サイトの規模やメールの量によって必要な日数は変わるため、余裕をもって計画したい。
| 作業 | 目安のタイミング | 確認すること |
|---|---|---|
| 新サーバの契約・構築 | 切り替えの1〜2週間前まで | PHP・データベースのバージョン、容量、メールアカウント数 |
| データの移行 | 切り替えの数日前まで | ファイル(SFTP)、データベース、メールボックスの中身 |
| 動作確認 | 切り替えの前日まで | hostsファイルや動作確認用URLで表示・フォームを確認 |
| TTLを短くする | 切り替えの前日まで | 元のTTL以上の時間を空けてから切り替える |
| DNSの切り替え | 当日 | 更新を止め、データベースの差分を同期してから書き換える |
| 並行稼働と確認 | 切り替え後の数日間 | HTTPS、メールの送受信、SPF・DKIM・DMARC、cron、バックアップ |
| 旧サーバの解約 | 問題がないことを確認してから | 旧サーバにアクセスやメールが届かなくなったこと |
DNS設定変更のタイミング
新サーバの準備と動作確認を終えてから、TTLを短くしてDNSを切り替える。切り替えの反映はTTLしだいで数分から数時間。キャッシュが残る場合に備え、数日程度は新旧のサーバを並行稼働させてから旧サーバを解約する
サーバ移転の手順
新サーバの契約から旧サーバの解約までの7つの手順。DNSを切り替える(⑤)直前に更新を止め、データベースの最終的な差分を新サーバへ移すと、データの取りこぼしを防げる
サーバ乗り換え時に使うツール

phpMyAdmin(ピーエイチピーマイアドミン)は、MySQLやMariaDBのデータベースをブラウザから管理できる定番のツール。データベースのエクスポートやインポートをはじめ、さまざまな操作がこれ1つで行える。多くのホスティングサービスの管理画面から利用できる。https://www.phpmyadmin.net/
よくある質問
DNSの変更が反映されるまで何日かかりますか?
レコードに設定されたTTLしだいで、事前にTTLを短くしておけば多くの環境で数分から数時間で切り替わる。ドメインのネームサーバそのものを変更する場合は、1〜2日程度かかることがある。キャッシュが残る場合に備えて、数日程度は新旧のサーバを並行稼働させておくと安心だ。
旧サーバはいつ解約すればよいですか?
DNSを切り替えたあと、Webサイトの表示やメールの送受信に問題がなく、旧サーバにアクセスやメールが届かなくなったことを確認してから解約する。数日から1週間程度の余裕をもって契約を重ねておきたい。
サーバ移転のときにメールを取りこぼさないためには?
新旧両方のメールアカウントをメールソフトに設定し、切り替え後の数日間は旧サーバにも新しいメールが届いていないかを確認する。受信サーバには、IPアドレスではなく事業者が用意するサーバのホスト名を指定すると、証明書のエラーを避けて新旧それぞれに接続できる。
WordPressのサイトを移すには何が必要ですか?
WordPressのファイルとデータベースの両方を移す必要がある。事業者の移行ツールや移行プラグインを使えばまとめて移せることが多い。あわせて、新サーバのPHPとデータベースのバージョンが、使っているテーマやプラグインに対応しているかを確認しておきたい。
DNSを切り替えた直後にHTTPSの警告が出るのはなぜですか?
多くの無料SSLは、DNSが新サーバに向いてから証明書が発行されるため、発行が終わるまでの短い時間に警告が出ることがある。DNSを切り替える前に証明書を発行できる仕組みを用意している事業者もあるので、事前に確認しておくとよい。
ピックアップ用語解説:TTL(Time To Live)
DNSの情報を、ほかのDNSサーバや端末がキャッシュとして保持してよい時間(秒)。レコードごとに設定でき、3600(1時間)や86400(1日)などがよく使われる。サーバ移転の前にTTLを短くしておくと、DNSを切り替えたときに新しい情報へ早く切り替わる。
ピックアップ用語解説:ドメイン名とIPアドレスとDNSの関係
インターネット上のサーバには、IPアドレスという番号が割り当てられている。IPv4では0〜255の数字4つをピリオドで区切った形で表し、現在はより桁数の多いIPv6も使われている。番号では覚えにくいため、覚えやすい名前として付けたものがドメイン名で、DNSはドメイン名をIPアドレスに変換する仕組みだ。