そのFTP、暗号化されていますか? FTPソフトはそのまま、接続方式を見直そう

サーバにファイルをアップロードしたり、ディレクトリを作ったり、ファイルを直接直したりするとき、今も欠かせないのがFTPソフトだ。ただし、同じFTPソフトでも、接続の方式によって安全性は大きく変わる。昔ながらのFTPは通信が暗号化されない仕組みで、さらに最近は、パソコンに保存したパスワードがウイルスに盗まれ、サイトが改ざんされる被害も起きている。今回は、FTPソフトを安全に使い続けるための接続方式の選び方と、あわせて知っておきたい対策を紹介していこう。
FTPは暗号化されない古い通信方式
FTP(File Transfer Protocol)は、ファイルを転送するための通信の取り決め(プロトコル)だ。ここで注意したいのは、「FTPソフト」と「FTPという接続方式」は別物だということ。FileZillaやWinSCP、MacのTransmitやCyberduckといったFTPソフトの多くは、暗号化しないFTPのほか、暗号化するFTPSやSFTPでも接続できる。
FTPの最大の問題は、通信がまったく暗号化されないことだ。サーバに接続するときに送るIDとパスワード、そして転送するファイルの中身まで、すべてがそのままの形で流れる。公衆Wi-Fiなど、途中の通信をのぞき見られる環境で使えば、IDとパスワードを盗まれるおそれがある。
FTPと暗号化されたファイル転送の違い
FTPではIDやパスワードが暗号化されずに流れるため、途中の機器から読み取られるおそれがある。FTPSやSFTPでは通信全体が暗号化され、途中で見られても中身は読めない
FTPはすでに主要なブラウザからも外されており、ChromeやFirefoxは2021年にFTPのサイトを開く機能を廃止している。インターネットの世界では、暗号化されない通信は使わないのが当たり前になっている。
いま本当に怖いのは「保存したパスワード」の盗難
2026年の今、盗聴以上に気をつけたいのが、パソコンに保存したFTPのパスワードの盗難だ。情報を盗み出すタイプのウイルス(インフォスティーラー)は、ブラウザに保存したパスワードなどと並んで、FTPソフトに保存された接続先とパスワードも狙う。FTPソフトの中には、保存したパスワードを暗号化せずに記録するものもあり、ウイルスに感染すると、そのまま抜き取られてしまう。
盗まれたアカウントでサーバにログインされると、サイトのファイルを書き換えられ、不正なコードや偽のページを仕込まれる。被害は自分のサイトだけでなく、サイトを訪れた人にも広がる。2009年ごろに日本で多くの企業サイトが改ざんされた「ガンブラー」も、FTPのアカウント情報を盗んでサイトを書き換える手口だった。
FTPのアカウント情報が盗まれる経路
アカウント情報は、FTPソフトに保存したパスワードの盗難、暗号化されない通信の盗聴、パスワードの使い回しなどから漏れる。盗まれるとサイトを書き換えられ、訪問者にまで被害が広がる
接続方式はFTPSかSFTPを選ぶ
FTPソフトはそのままで構わない。変えるべきなのは接続方式で、通信を暗号化するFTPSかSFTPを選べばよい。どちらも安全な方式で、名前は似ているが仕組みは異なる。
SFTP(SSH File Transfer Protocol)は、サーバの遠隔操作に使うSSHの仕組みの上でファイルを転送する方式だ。パスワードの代わりに「鍵」を使って認証することもでき、より安全に使える。FTPS(FTP over TLS)は、FTPの通信をWebサイトのHTTPSと同じTLSで暗号化する方式だ。FTPのアカウントとパスワードをそのまま使え、従来のFTPと同じ感覚で使えるのが利点で、レンタルサーバの標準の接続方式として案内されていることも多い。
FTPSを使うときに確認したいのは、FTPソフトの設定で暗号化が「必須」になっているかどうかだ。「暗号化が使えれば使う」という設定のままだと、何らかの理由で暗号化できなかったときに、暗号化しないFTPで接続してしまうことがある。
かつては、FTPSやSFTPに対応したレンタルサーバは少なかったが、現在は多くのレンタルサーバがどちらか、または両方に対応している。SFTPは、SSHの利用を申し込んだり、鍵を作ったりする準備が必要なことが多い。どちらが使えるかはレンタルサーバのマニュアルで確認し、使えるほうを選べばよい。
FTPソフト・SSH・管理画面を使い分ける
WordPressのインストールやディレクトリの作成、ファイルの差し替えや直接の編集など、画面で見ながら作業できるFTPソフトが便利な場面は今も多い。一方で、たくさんのファイルをまとめて操作したり、圧縮ファイルをサーバ上で展開したりするなら、SSHでコマンドを使ったほうが早い。コマンドを全部覚えていなくても、簡単な作業はFTPソフト、まとめて行う作業はSSH、と使い分ければ十分だ。
このほか、少しの修正なら、レンタルサーバの管理画面にある「ファイルマネージャー」でも、ブラウザからファイルをアップロード・編集できる。WordPressの記事の更新やテーマ・プラグインの追加は、WordPressの管理画面から行える。Web制作会社や開発者なら、Gitでファイルを管理し、GitHubなどから自動でサーバに反映する「自動デプロイ」の仕組みを使う方法もある。
サーバへのファイル転送の方法
FTPソフトはそのまま使い、接続方式をFTPSかSFTPにする。まとめての操作はSSH、少しの修正は管理画面のファイルマネージャー、と使い分ければよい。暗号化しないFTPだけは使わない
FTPを使うときに最低限やっておきたいこと
まずは、FTPソフトに登録している接続先の設定を見直し、接続方式がFTPのままになっていないかを確認しよう。FTPSかSFTPに切り替えるだけで、使い方は変わらない。
そのうえで、FTPソフトを安全に使い続けるために、次の点に気をつけたい。
- FTPSを使う場合は、暗号化を「必須」に設定する
- パスワードを保存する場合は、ソフトのマスターパスワード機能や、OSのパスワード管理(Macのキーチェーンなど)で暗号化して保存する
- FTPのパスワードは長く複雑なものにし、ほかのサービスと使い回さない
- 作業が終わったら、使わないFTPアカウントは削除・無効にする
- サーバの管理画面で、接続できるIPアドレスや国を制限する機能があれば使う
- パソコンのOSとセキュリティソフトを最新に保ち、出どころの分からないソフトを入れない
あわせて、レンタルサーバの管理画面そのものにも2段階認証を設定しておこう。FTPのパスワードを変えても、管理画面を乗っ取られれば新しいアカウントを作られてしまう。
ファイル転送の方法のまとめ
| 方法 | 暗号化 | 特徴 | 向いている使い方 |
|---|---|---|---|
| FTP | なし | IDやパスワードがそのまま流れる | 使わない |
| FTPS | あり(TLS) | FTPのアカウントで使える。暗号化は「必須」に設定 | FTPソフトでの日常的な作業 |
| SFTP | あり(SSH) | 鍵による認証もできる。SSHの準備が必要なことが多い | FTPソフトでの日常的な作業、SSHと併用 |
| SSH(コマンド) | あり | まとめての操作が速い | 多数のファイルの操作、圧縮ファイルの展開 |
| 管理画面(ファイルマネージャー) | あり(HTTPS) | ブラウザだけで使える | 少しの修正 |
| Git・自動デプロイ | あり | 手作業のアップロードが不要 | 制作会社・開発者 |
よくある質問
FTPソフトはもう使わないほうがいいですか?
使って構わない。危ないのはFTPソフトではなく、暗号化しないFTPという接続方式だ。FTPソフトの接続方式をFTPSかSFTPに切り替えれば、使い方を変えずに安全に使える。
FTPはなぜ危険なのですか?
通信が暗号化されず、IDやパスワード、ファイルの中身がそのまま流れるためだ。さらに、FTPソフトに保存したパスワードがウイルスに盗まれ、サイトを改ざんされる被害も起きている。
FTPSとSFTPはどちらが安全ですか?
どちらも通信全体が暗号化される安全な方式だ。FTPSはFTPのアカウントでそのまま使え、SFTPはSSHの仕組みを使い、鍵による認証もできる。レンタルサーバが対応しているほうを選べばよい。FTPSでは暗号化を「必須」に設定しておこう。
レンタルサーバでSFTPは使えますか?
現在は多くのレンタルサーバがSFTPかFTPS、または両方に対応している。プランによってはSSHの利用申請が必要な場合もあるので、管理画面やマニュアルで確認しよう。
FTPソフトにパスワードを保存しても大丈夫ですか?
保存するなら暗号化しておこう。暗号化せずに保存していると、パソコンがウイルスに感染したときに盗まれるおそれがある。FileZillaならマスターパスワードを設定し、Macのソフトならキーチェーンで管理されているかを確認しよう。
ピックアップ用語解説:プロトコル
コンピュータどうしが通信するときの約束事。Webの表示にはHTTP・HTTPS、メールの送信にはSMTPといったように、用途ごとに決まっている。名前が似ていても、FTPとSFTPはまったく別のプロトコルで、FTPSはFTPに暗号化を加えたものだ。
ピックアップ用語解説:インフォスティーラー
パソコンに保存されたパスワードやクッキー、暗号資産のウォレットなどの情報を盗み出すウイルスの総称。無料ソフトや偽の広告、メールの添付ファイルなどを通じて感染することが多い。ブラウザだけでなく、FTPソフトやメールソフトに保存された情報も狙われる。





